まだある。財務省を解体しても、財政赤字の大きな要因となっている年金や医療費といった社会保障費の問題は残る。増税を避けたいのであれば歳出削減の議論が不可欠だが、デモではほとんど触れられていない。
本来ならこうした問題をどうするべきか、ひとつずつ丁寧に議論するべきなのだが、デモは議論の過程をスキップして財務省をヒステリックに攻撃するだけ。これでは国民の支持を得ることは難しいだろう。
実際、このデモが世間から全面的に支持されているかといえばそうではない。分かりやすい例が「財務省解体したところで君たち貧乏人の底辺は一生貧乏人のままです」「減税のためにはまず投票に行ってそういう政策を出してる党にちゃんと投票して、政治家を動かして」と切り捨てたホリエモンに代表されるように、世間はここ数年来、デモという形で政治活動をする集団に対して冷ややかな評価を下している。
人気インフルエンサー・ひろゆきもこのデモに対して「いくら財務省の前でデモをしても、財務省は解体されない。なのでデモは貧困の人たちの時間とお金を無駄にしている悪行です」とミもフタもない批判をしている。同時にひろゆきは、デモで現実を変えるなら、テロや暴動に近いくらいのことをやればいいという説も披露しているのだが、この極論はともかく、現状のデモに効果がないというのはその通りだろう。
「近年だと2013年の特定秘密保護法反対デモや、学生団体・SEALDsが中心となっておよそ12万人を集めた2015年の安保法制反対デモ、沖縄の米軍基地反対デモなどが有名ですが、いずれも政策自体は変わらず法案が成立しています。以前と変わらず、その後の選挙でも投票率に大きな変化はなく、政策を進めた自民党が議席を確保しました」(前出・週刊誌記者)
財務省を解体するのであれば、まずは財務省設置法を廃止し、新たな省庁を設置する法案を国会で可決する必要がある。そのために国民にできることは、選挙で財務省解体に賛成する政治家に投票し、当選させることである。いくらデモを行ったところで、財務省には何の影響もないのだ。
今回のデモがどうにも不気味なのは、そもそもいったいどこの誰が主体になって行っているのかが判然としていない点だ。報道によれば「いくつかの個人や団体が連携する中で自然発生的に始まった」とされているのだが、ネットに流れるデモの映像やいくつかの報道を見る限り、なかなかに怪しい人物・団体が集まっている。
たとえば中心人物の一人として産経新聞に紹介されているのが昨年9月から、「元祖!財務省前デモ」という名称の活動を行ってきた政治経済アナリストの池戸万作。一方的にれいわ新選組のブレーンを名乗って、れいわ側から完全否定されたり、AbemaTVで成田悠輔を相手にレベルの低い持論を一方的に展開して失笑を買ったこともあるなどなかなかに香ばしい経歴の持ち主だ。