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「この漫画の貧乏っぷりがとんでもない」杉作J太郎のTOP3

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目玉のおやじに至ってはお金に対する欲というのがそもそもまったくない。小さな茶碗にお湯さえあればそれに入浴するのが唯一の趣味のようである。人間、金のかからない独自のたのしみを持っていると強い。目玉のおやじは妖怪だが。

小学生の高学年から夢中になったのが男おいどんだ。これも乏しい小遣いの中からコミックスを買っていた。それ以来、成人して紆余曲折あり一昨年の夏に救急搬送されて死の淵から脱出して今日に至るまで、まあほんとにずーっと、私のそばにはいつもこのコミックスがある。

いまも部屋に寝床の枕元にトイレに台所に車の中に『男おいどん』がある。

そして読むたびに「そうばい!(そうだ、という同意のおいどんこと大山昇太が使う九州弁)」と熱い気持ちをもらっている。おいどんはアルバイトで生計を立てている浪人生。

玄関、トイレなど共用の部屋貸しタイプのアパートでひとり暮らしをしている。アルバイトの時間が短いのか、なまけものだからか、基本、貧しい。外食できないわけではないが、衣服にまではお金が回らないので一年中同じ服を着ている。洗濯機などないのでパンツはかなり履いて次のを買う。古いパンツは捨てるのはもったいないので押し入れに放り込んである。それが何百枚ある。

家財道具はいっさいない。家具もない。財産は押し入れに詰め込んだ古パンツだけだ。その古パンツ一帯は汚くてじめじめしているので、そこにキノコが生えてきている。それを焼いたり茹でたりして食べたりもする。

バイト先のラーメン屋に卸したりもしている。そのラーメン屋のラーメンにはそのキノコが具として乗っていたりする。

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この漫画を読み続けて50年がすぎたが、このラーメンを食べたいと思ったことはない。だが俺の心のどまんなかにおいどんがいる。

だから結婚できないのかもしれない。それで平気なのかもしれない。

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文/杉作J太郎
画像/『男おいどん』(1)(松本零士/小学館)
初出/『実話BUNKA超タブー』2025年9月号

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